Ado INI / THE FRAME
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諏訪内晶子
諏訪内晶子 / J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲)【初回限定盤】【SA-CD】【SA-CD HYBRID】
平均評価:
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全商品レビュー

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2022/01/19 14:47

質屋の末裔 さん

評価:

さらなる新境地へ
とにかく音色が美しい。尽きることなく溢れ出す泉の湧水のように、ひたすら豊かな響きが流れていく。そんな満たされた音のひとつひとつを楽しむように、朗々とした淀みない旋律を奏でている。バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタといえば、時にはまるで2本の楽器で演奏しているような効果をあげる初めての試みとして作曲されたことでも有名な曲ながら、知識として知ってはいても実際に聞くと「どうやって弾いているのだろう??」と不思議に思うことがある。演奏者にしてみれば、とてつもない難技巧を要求されるに違いない。ところが、諏訪内さんの演奏は微塵もそういうことを感じさせない。あまりに自然にサラリと弾きこなしてしまうため、全く難しい曲だということが分からない。そして、そういう技術的な次元をはるかに超越した芸術世界を表現している。彼女にしか出せない音というものがそこかしこに聴かれる。それは奇跡的とさえ言える天上の調べ。織りなされる音の重なりが、聴くものの心を優しく包み込んで、ただただその時間を忘れて身を任せていたいような安らぎが続く。こういうひとときが味わえる演奏は滅多にない。新たな愛器、グァルネリ・デル・ジェス『チャールズ・リード』をはやくも良き相棒として十全に使いこなしているように思う。コロナ禍さえも転じて福となし、楽器と向き合う時間に集中できたからかも知れないが、それは結果論だろう。やはり、彼女だからこそ弾きこなせるものだったろうし、幸運な出会いだったのだと祝福したい。これからも、さらにますますご活躍されることが楽しみでもあり、今回の録音の出来はそのことを十分に予見し、期待できること請け合いである。彼女と同じ時代に生きており、こういう形で演奏を聴けることは幸せなことだと、しみじみと思う。